勇者就任。ちなみに副業です。
「貴女に、諸悪の根源を退治していただきます。」
「・・・・それって、『勇者』みたいだな。」
「まぁ、似たようなものですね。
ヒトが悪政で苦しんでいるのはもちろんですが、私達にも悪影響が出ています。
貴女は皆の暮らしの為、幸せの為の仕事をなさる立場の方です。
それを脅かす者を退治する!・・・似た『ような』ものではないですね!『そのもの』です!!」
「落ち着け。
でも、『勇者』引き受けたとして、仕事はどうするんだ。いつも、いつも『仕事が〜』って呻いているだろ。
普段のおまえなら、逆に反対すると思ったけどな。
それに、『その場にすぐ移動して、ハイ退治』は簡単だが、それじゃぁダメだろ。準備もアフターケアも充分なものが必要だ。
下手に私が関与しても、ヒトの為にならないと思うが。
ヒト嫌いのおまえにしちゃ、優しい采配じゃないか。」
「もちろん、普段の業務もきちんとしていただきますよ。貴女でしたら簡単にこなせますでしょう?
ま、部下たちには多少頑張っていただきますが・・・。」
「・・・ほどほどにな。」
「『ヒトの為云々』はご安心を。きちんと策は御座いますので。
それに私は別に『ヒト嫌い』ではありません。弱いからといって、むやみやたらと庇護を求めて甘えている者が好かないだけです。」
「おまえらしい。
仕事に問題ないなら、引き受けるよ。
普段とはちがう刺激も欲しいし。」
「では、本日の業務を頑張って終わらせて、『勇者会議』を開きましょう。
ははっ。公式にヒト退治ができるなんて!なんて楽しいんだろうか!!!!」
「・・・やっぱり、ヒト嫌いなんじゃないか。」
書類が散らばった執務室で。
魔物の王・・・魔王の私が、人間退治をすることになりマシタ。
今日も魔界は平和デス。