そろそろ父の日だなー、何するかなーと買い物帰りに考えながら帰宅した夕方。
リビングで、はじめが工作をしてました。
ぱぱさん、ありがとうの日
リビングのドアを空けた瞬間に目に入った光景。
テーブルに工作道具を沢山広げて、色画用紙に何か一生懸命字を書いているはじめがいた。
頭が良いのか、知識の吸収率がすごいのか、3歳児ながらも普通に字が書けるはじめ。今も必死に字を書き続けてる。
俺がリビングのドアを開けても気付かない。部屋に入っても気付かない。・・・背後に来ても・・・まだ気付かない。
なんちゅー集中力かね!?3歳児とは思えないこの集中力!!現役学生の俺でも難しいと思われまっす。
「は〜じっめ君、な〜にやってんの?」
「っっっ、、、」
あれから更に1、2分ほど後ろにいても、気付いてくれなかったんで我慢できなくて声を掛けてみたら。
おもし・・・可哀相なくらいにビックリさせてしまったよ。
あれね。漫画のあの表現。驚いたらピョンって飛び上がる表現。現実にあるんだねぇ。大げさに描いてるわけでもなかったんだ。いやー、大発見!!
そんなくだらない事に感動してら、下からメッチャ寂しい視線を感ジマシタ。
俺が声を掛けるまで必死に、一生懸命に書いてた色画用紙を胸にヒシッと寄せて、哀愁漂う目をしたはじめがオイラを見テマシタ。
「!!ごめんっ、はじめ!驚かしたせいで、字が!!!」
なんてこったい!!ちょっと考えれば分かることでしょ!!俺の馬鹿者がっ!
ぅあ〜、折角一生懸命に作ってたのにぃ・・・。
さっきとは逆に、俺が悲しみに打ちひしがれていると、クイクイと俺の袖を引っ張る感触が。まだ悲しんでるよな、と伺ってみたら逆に俺を心配してるはじめ。
自分の作品よりも、作品を台無しにしやがった俺の方を心配するこの子!!なんて、良い子にそだったんでしょう!
・・・泉家に来てまだ数ヶ月しかたってないから、俺達がはじめを良い子に育てた訳じゃないけどね・・・。でも、はじめが良い子な事にはかわりは無し!!
はじめには心配ないよ、大丈夫だよ、と言ってはじめの方の問題に取り掛かった。
「ホントにごめんなぁ。一生懸命にやってたのに・・・。因みに何を作ってたんだ?」
「、、、、ぱぱさんに。」
父ちゃんに。色画用紙やらを使って。・・・・・・・・あぁ、そうか。うん。本当に良い子だよ、はじめ。
「父の日か。」
コクリと。無言だったけれども、しっかり「そうだ」と返したはじめは、その小さな手を俺の手に添えた。引っ張るのでもなく、握るのでもなく。ただ添えていた。
「・・・」
「、、、、、。」
「・・・・・・・」
「、、、、、、、、、、、、、。」
控えめに添えられたお手々 + つぶらなお目々の見つめ攻撃 = こ う さ ん
「何を手伝えば良いかね、はじめさん・・・。」
「、、こっち。」
もともと良い子だったはじめが、泉家に来てから身に付けたものは「おねだり」。家に来て最初の頃は遠慮遠慮の子だっだけど、だいぶ良い方向に図太く成長してるんだよねぇ。
こういった成長を見ると、家族冥利に尽きるわな!
リビングテーブルには色とりどりの画用紙、カラーペン、のり、幼児用はさみ、そして母ちゃんの絵本数冊。
そして、はじめが座っていた所には短冊位の大きさに切りそろえられた色画用紙があった。それは、はじめが胸に寄せた(俺のせいで失敗作になった)あの紙と同じ大きさ。
「、、、ぱぱさんに、かたた、、た、、た?」
「肩たたき券?」
「ん、、。」
父の日のプレゼントに「肩たたき券」。いいねぇ〜。俺もやったわ。嫌そうな顔した幼稚園児の俺と、片手に「肩たたき券」、もう片方で俺を抱っこして人様には見せられない顔で頬ずりしてる父ちゃんとの写真があったもん。
はじめがプレゼントあげたら、父ちゃん、絶対に俺の時以上に嬉しがるって。写真は俺が撮ろっと。
「にー。、、ビッて、するみたいなやつ、、、できる?」
・・・子供のことばは時々暗号だわな。まぁ、言いたいことは分かるけどもね。「にー」は「お兄ちゃん」で俺のこと。「ビッてするやつ」は多分紙を破る表現。
つまりは、切り込みを入れればいいんだよな。カッター、カッター。
10分後。難しいと思ってたけど、結構簡単に切り込みを入れられたので、はじめにバトンタッチ。
ありがとう、とキラキラお目々で言われちまったゼ☆
俺から受け取った券に文字を書こうとペンを持ったのだが、なかなか書こうとはしない。どうしたよ?
「、、、かた、、た、、た、、た、、、、、、、、、?」
うん。書きながらだと分かりにくいよね、「た」の数。しかも平仮名だし。
「か た た た き。『た』は3つ。」
「、、か、たたた、き、けん?」
「そう。か、たたた、き券。」
券の枚数分、「た」を3回言いながら書いていったはじめ。文字だけじゃツマラン、てことで母ちゃんの絵本を参考に絵も描きました。
そして、1時間後。父ちゃんが帰ってくる前に完成―――!!!
父の日まで見つからんよう大事に保管しとけ、と言ったら猛ダッシュでおもちゃ箱の奥底に隠しに行ったよ。何もそこまで慌てんでも。
6月の第3日曜日。はじめから、父ちゃんへ初めてのプレゼント。
「、、、、、、ぱぱさん、、いつもおつかれさま、、、、、、いつも、ありがと、。」
案の定、父ちゃんは狂喜乱舞だったよ。そして、それをバッチリ写真に収める俺。母ちゃん、姉ちゃんは生温かい目で見守ってくれてたよ。