10月31日は、妖怪・お化けがはびこる日…はびこれる日。
人間も妖怪も妖精も・・・想像し得るイキモノが存在する世界で、人里離れた場所で暮らしている2人がいました。

「エド!エドエド、エディ!!今日は10月31日です。“ハッピィハローイン”です。『とりっく おあ とりっと』ですよ!!」

山小屋とも言える様なログハウス。そこには、2人の人影があった。
瞳とキラキラさせて、両手をめいっぱい広げている天使の衣装を着た少女と、少女の目の前にいる青年の2人だ。

「『ハッピーハロウィン』で“トリック オア トリート”ね。『とりっと』って(笑)」
「ん、ん!!お菓子か、いたずらか、なのですよ。早くください!お菓子ください!!」
青年の訂正にも一応は返事をしつつ、だがやはりお菓子が楽しみなのだろう。すぐに催促を始める。
そんな少女に苦笑しながら、綺麗にハロウィン・カラーにラッピングされたお菓子を与えた。食べる前には手を洗うように、食べた後は歯を磨くように、と注意を言いながら。
さて、去年と同じ一連の流れ。これでおとなしくお菓子を食べ始めるだろうと思っていたのだが(実際に、去年まではそうであった)まだ、何かあるのだろうか。少女は期待に満ち満ちた表情で青年の前に立っていた。

「どうしたのナーナ?食べないの?」
もしかして不満足なのか、、、悪戯を考えているのか、、、何にしても例年と違う反応に青年はビクついていた。
「違いますよ。私だけではダメなのです。ホラホラッ、エドも。おまじない、言ってくださいな!」
一緒にお祝いしましょ?と太陽の様な笑顔で青年の問いに答えた。
対する青年も悪戯でないと分かりホッと一息。「トリック オア トリート」の言葉も忘れずに添えた。

青年が少女にあげたのは、ハロウィン使用の形にくり抜かれたクッキー。味は、オーソドックスなバターやチョコから、カボチャ味まで。
はてさて少女が青年にあげたお菓子はというと…。

「ヒィイイィィイッ!!!何!何これ、この色!!???」
渡されたお菓子を見ると、なんとも言えない色。思わず落としそうになった程だ。
綺麗なガラスの容器に入ったゼリー。可愛くリボンも掛けられてはいる・・・。のだが、中身が...中身の色がいけない。
「赤」ではない。血の様な色。血の様に毒々しい色をしたゼリーであった。
そのおどろおどろしい色に血の気を引き、真っ青な顔色になってしまった青年。顔色だけではなく、若干震えも見える。

中身は何か聞きたい。でも聞いたら後悔しそう。でも聞かないと食べられない。
でも・・・・・・・食べないとナナを傷つけちゃうよぅ。それはだめだよ!!!と決死の覚悟、一念発起して尋ねた。
「な、ナーナァ。このゼ、ゼリーさ、、、、、何味かなぁって…。」
かなり震えた声で。
「エドの大好物ですよ!!私、頑張りました!!」

--あぁ、もう決定。中身何か分かっちゃったよ、僕。

涙を流して項垂れてしまった青年。もちろん心の中で。「ありがとう、嬉しいよ。」と多少棒読みながらもお礼を言えた自分を褒めてあげたいと思ったほど、内面と外面の差は激しかった。

「でもね、ナーナ。僕、『血』は飲まないって言ってたよね?忘れちゃったの?」
そう、ゼリーの色は…血の「ような」ではなく、まさしく血「そのもの」の色であったのだ。

間も妖怪も妖精も・・・想像し得るイキモノが存在する世界。そして血が大好物な生き物。青年、もといエドは正真正銘の吸血鬼であった。
ただし、吸血行為が苦手な吸血鬼であるが。

「はい、知ってますよ。エドに教えてもらったエドのことは忘れませんから。それに、飲『ま』ないであって、飲『め』ない、ではないのですよね!ですから大丈夫と言われましたよ!」
「誰?この子にそんな入れ知恵を与えたの!?」
半泣きの状態で思わず叫んでしまった青年。それに対して少女とは違う別の声が答えた。

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