それは、遠い遠い、とても昔のことから話さないといけないんだ。


力を持った、ある者が目を覚ました。というよりも"産まれた"と言った方が適切かもね。
その者の力はかなり強大なもので、世界を創り出せる程で。
創った世界は、始めは水のみで。そして植物が生え、動物が生まれた。穏やかに豊かに生命を育んでいってね。
力あるものは、時には手を加えつつ、それらを見守っていたんだ。


長い長い年月を経て、世界は穏やかに成長し続けて。ついに、人間が誕生した。
力ある者は、それはもう大喜びだったよ。他の動物よりも速い成長で、世界を今まで以上に豊かにしていったから。
時々は人間の前に姿を見せて、知識を教えたり・・・一緒に遊んだりしてたね。
その頃から、力ある者は"創造主"と呼ばれ出したね。
それに、仲のいい人間たちからは"無邪気な神様"とか"子どものような神様"って意味の単語で呼ばれたりもしてた。


うん。しばらくは、それでよかったんだけど・・・。
世界が思ってた以上に成長しすぎて。力ある者・・・これからは創造主って言おうか。
創造主1人だけでは、世界がいいバランスで在り続けるように、手を加えながら見守ることが出来なくなってきたんだ。


だから新たに4人、神を、というか世界を見守るものを創ったんだ。


世界に降りなくても、話相手になってくれる者が4人出来て。創造主は、また更に喜んだよ。
彼らと、どうすれば皆にとって心地よい世界で在り続けられるか語り合った。
かと思えば、キャーキャー、ワーワー子供みたいに遊んだ。真剣に勤めを果たし、真剣に遊んでたね。
そして、今まで以上に、世界を見守ることに力を入れていった。


創造主と4人の仲は、とてもよいものだったんだ。・・・・でも、それも少しずつ変化してたらしい。
創造主は彼の心の変化に気付けなかった。


神の1人である彼はね。いつの間にか、創造主を愛するようになっていたんだ。
もちろんそれは、自分を生み出した親に対する愛でもなく、世界を見守る仲間に対する愛でもないよ。
そう。たった1人だけに向ける、純粋で劣情を伴った愛だった。
彼は想いを創造主に伝えて。そして、創造主もその想いに答えたよ。
"創造主"といっても、キャッキャと遊び回るような神だからね。そりゃあ、恋をしたっておかしくはないよね。
他の3人とは違った感情を彼に対して持っていたことは確かだった。
愛していたんだよ。


そして同時に、創造主は"世界"も愛していた。これは、親が子に向ける愛情だったんだけど。
彼にしてみたら"愛"と付くものは、彼にだけに与えてほしかったみたい。
創造主にそう言ったよ。でも、心って、人に言われてどうにかできるものじゃないもんね。
創造主は彼を愛して、世界も愛し続けていった。
彼は創造主を愛して、世界を憎んでいくようになった。


創造主は、そんな彼の心の変化に気付けなかった。気付いてあげられなかったんだ。


そして・・・。そして、彼は限界を達してしまった。


世界を憎んで憎んで憎んで。彼は世界に呪いをかけてしまった。
世界が無くなれば、創造主の愛情は自分だけのものだと考えたって。
世界がバランスを失うように。崩壊してしまうように。
彼1人の力だから、急激な変化はないけれど。でも、確実に世界はバランスを崩してしまった。
そして、彼は創造主にも呪いをかけた。
創造主の力がその世界に影響を与えることが出来ないようにしたんだ。
・・・彼より創造主の方が力は断然に強いのにね。どうして、創造主は呪いにかかってしまったんだろうね。
他の3人の力と、それまでの創造主の力があるから世界は何とかなっているのが現状だよ。


こうして、世界は崩壊の道へと進んでいっている。少しづつでも確実にね。
3人の神だけでなく、世界の人々も、何かしらがんばってるよ。


そしてね、3人の神経由で伝えられた創造主の教えを、世界の希望を、今か今かと待っている。


御子が現れるのを待っているんだ。