第一章 - 1


魔界と人間界を繋ぐ扉の関所の1つ。
そこで、問題が発生した。


門番が守る関所は、各界を繋ぐ大切な「扉」の関所である。その関所にここ数ヶ月、人間界に住んでいた魔物、動物、更には人間までもが大勢押し寄せてきているのだ。始めのうちは、『人間界で何かあったんだろう。』と思うだけで、そこまで問題視されなかった。だが、押し寄せてきた人間たちが関所近くの土地に住み始めたこにより問題が発生した。

人間が住み始めた土地は、ぱっと見て危険な動物も魔族も住んでいない所である。人間としては住みやすく、人間界に近いので安心な土地と思えたのだろう。
だが、実はそこは魔族の集落であった。いや、その土地自体 −土そのもの− が魔族なのである。
魔族=土族からしたら、いきなり現れて自分達の体の上に勝手に家を建て始め、生活をしだすのだから土族はたまったものではない。

更に、土族は下層の土にも光を当てるために定期的に土から形を作り出し、活動をすることがある。言うなれば「動く粘土」だ。魔界であれば、何ら不思議でもなんでもない光景である。しかし、人間からすると・・・。
土族側は、日光浴だったり、そのついでに人間と交流しようと思ったりと害を加えるつもりはまったくないのだが、人間側は「ゾンビが出た!」「襲われる!」と思っているのだろう。
土族を退治するために石を投げるわ、棒で殴りかかってくるわ、下手したら剣で切りかかってくる者もいたらしい。
幸いなのは、そのように攻撃をされても「土」であるので、彼ら土族が怪我をしない&死なないこと。そして彼らが、好戦的な性格でないことだった。

それでもやはり、嫌われるのは悲しい。傷つく。ここ1ヶ月、土族は1度も地表に出てくることはなくジッと土のままだという。それらのせいで、彼らはかなりストレスが溜まっていた。『このままじゃ、どうにかなっちゃうよ・・・。』そう感じた彼らは門番に相談したのだった。
門番もまた、減るどころか、逆に増える一方のモノ達にホトホト困っていた。このままでは、関所での事務処理もままならなくなることは簡単に予想できるし、「扉」付近の安全が保てなくなってしまう。そうなってしまう前に、報告しなければならないと思い、しばらくの間、相方に仕事を任せて魔王陛下の御座します城に登城しようと決心したのである。

 

<< Prev    Next >>