「あんねぇ。俺・・・殺されたんだわ。俺が幽霊なのは信じてくれる?あ、信じてくれるか!」
先程の元気はどこへやら。沈んだ声で話し出した。・・・・が、突拍子もねえなぁ。
まーなー。何度触ろうとしても無理だったし。壁抜けも実際に見せてもらったし。信じるしかないよな・・・。
世の中まだまだ不思議で一杯だ、と実感したな。

「俺さぁ、仕事、プログラマーじゃんか。趣味の延長でこの仕事に就いたけど。
 でも、結構良い感じにこなしてたの知ってるよな。んでさー。最近、新しいソフト作っちゃったんだよねぇ。
 あぁ。これは仕事じゃなくって、完璧趣味で。でも売りに出せば一財産稼げちゃう♥ ってなやつなわけよ。」

『ヤツは馬鹿だ。』とさっき言ったが、ことコンピュータに関しては鬼の様な才能を見せる。
そして、『結構良い感じにこなしてた』とヤツは言っていたがそんなもんじゃない。ヤツの生み出す物は全てかなりの評価を得ている。その世界でヤツの名前はかなり有名だという。・・・・やっぱり普段は馬鹿だが。

「んでさー。それをついうっかり、ちょいと素行がオチャメでお金に困ってるお友達に話しちゃって♥」
「欲に目の眩んだそのお友達に殺されたって訳か。」
「さっすが、まさ君!さっすが刑事!!
 やーねー。後頭部を灰皿でガッツーンですよ。もう、痛いのなんのって!
 んで、俺を殴った後、そのお友達はソフトのデータを盗んだって寸法さ!
 容量大きすぎて、落とすのに時間かかっててさ。かなり焦ってたなぁ。あの顔、マジ可哀相だった。うん。
 しかも、おれっちどっかの山に捨てられちったのよ。あ、因みに3時間ほど前の出来事ですよ。正義さん。」

口調がいつもの調子に戻ってきた。
本当に何なんだ。恐怖心を隠すためや、現実を直視したくないためにふざけた口調になってるわけではない。
3時間前だと?じゃあ、死んで直ぐってことじゃないか。なのになんで落ち着いていられる?
普段と、生きてた時と変わらないんだ。瞳を見る限り、しっかりと現実を受け入れてやがる。
後頭部を殴られたと言ったな・・・。即死は難しい。意識もあったと言った。
ヤツは自分が死ぬのをじわじわ感じながら逝ったのか?
そう考えると背筋が震えた。そんな惨い死に方をしたヤツの状況に。・・・そして、ヤツの精神に。
そう思いつつヤツを見ると、「できたてホヤホヤの幽霊さんですぞー♪ 死にたてですぞー♪」と歌っていた。
・・・ヤツはヤツに変わりはないか。うん、ヤツは馬鹿だ。

「それで?わざわざ俺のところに化けて出てきたのは、山ん中に捨てられたお前の遺体を捜せってことか?」
「ノンノン!それは通報があれば自然と捜索してくれるっしょ。
 計画性皆無な殺人劇だったから、目撃情報もたくさんあるだろーし。
 そうじゃなくてぇ、その後?になるのかな・・・?俺のパソコンについてなのよ!」