第一章 - 6


「待たせた。では始めよう。」
凛とした魔王陛下の一声で会議は始まった。

まずは、現時点で判明している情報について、それぞれの意見・感想を聞いていった。言い方や表現方法に違いはあったが、まとめてみるとやはり皆一緒の考え。
「人間なんてどうでもいいが、「扉」の安全は早い段階で対処すべし。」であった。

まず、これで第一区切り。ただ意見・感想を言うだけであったのに、だいぶ時間が経過しているようだ。太陽はとっくに沈みきり、後数刻で月が真上に差し掛かろうという時間である。闇を好む魔物たちが活動をし始め、外はザワザワと昼より若干騒がしくなってきた。とは言っても、魔界の夜は長い。まだまだこれからだよ、という感覚なので会議出席メンバーは慌てることも無かった。そして、一息ついて落ち着いたところで、宰相が皆の注意を引くように咳払いをした。

「ネペンティアについて新たな情報を加え、もう一度説明致します。
皆さんご存知の通り、人間界最大国のネペンティアは絶対君主制です。現王になってから、国政は悪化し益々ひどくなっていく一方です。そして、このままではいけないと思ったのでしょう。反乱軍が作られました。が、かなりの人数であるのに一行に城に攻め入る様子は見せず、ただ本拠地で情報収集をしているのみです。ここまでは良いですね?−−−では、新たな情報を。

今でこそ、民にとっては悪辣で、王族・貴族にとっては善良な政治を行う王に対し、恐れて何も言えない官吏ばかりですが、初めのうちはそうでもなっかたようです。まぁ、そうでもなきゃ国は成り立たないのですが。
その、王に発言した人物たちですが、誰もが、ネペンティアだけでなく人間界を代表する「賢人」と言われている人間でした。ざっと挙げるならば、大魔道師に最高神官長や国軍隊長、それに第三王女もそうですね。
その他にも大勢の賢人が王を諫めようとしましたが、聞く耳を持ちませんでした。賢人達は早々に諦めたのですね。ネペンティアを出国した先駆けは彼らと言ってもいいでしょう。それに続き、民が脱国し此方まで流れて来ているということです。まぁ、自らそうした者だけでなく、そうさせられた者もいますがね。
また、賢人ではありませんが、王の近くにいた貴族等にも、自ら除名し脱国した者がいます。・・・何の対策もせず、抵抗もせず逃げ出すなんてほとほとあきれ返りますよ・・・・・・。それで、此方に迷惑に迷惑を重ねて尚、堂々としているんですからね。勝手極まりないとはこのことですよ。

コホン!そして、反乱軍についてですが、その賢人が数人いるそうです。と言いますか、軍を結成したのは彼らです。
国軍隊長と第三王女がリーダー格となり、最高神官長が相談役です。他のメンバーですが、幹部メンバーは先程の3名に加え、双子の王子である第三王子と第四王子がいます。元々双子だからと忌み嫌われていたようなので、今回の騒動はこの双子にとっては良い転機だったのでしょう。自ら率先して反乱軍に入ったそうですよ。この5名が主要メンバーです。
後は、まぁ、似たり寄ったりの人間ですね。数を見るときちんと反乱軍に入っていると分かる人数は1万人。反逆罪が怖くて良い出せない、または入りたいが入れない、という人間を合わせると5万人になります。何でしょうね、このとんでもない数の差は。

そして、なぜ情報収集のみに留まっているのかというと・・・ここからが重要です。ネペンティア王は何十人という魔道師を従えているそうです。・・・いえ、この言い方は適切ではありませんね。「王城にいる全ての人間が力の差はあれ、魔力を使える人間である。」が最もです。もちろんその中には、ネペンティア王も含まれますよ。
ですから、王は余裕綽々なのですね。「赤子を捻るよりも先に他国をぶち負かせ!」といったところでしょう。反乱軍を打たずにいるのはこのためかと。魔道師1人当たり兵士100人ですからねぇ。
反乱軍も城に攻め込もうにも、まずその行動が筒抜けになってしまい、さらに城前まで来たとしても結界に阻まれて入城は不可能。情報収集位しか活動が出来ないわけです。」

若干、毒を含ませつつ、宰相の説明は一端終わり、周りの反応をうかがった。

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